マ・メール・ロワのモチーフとなった作品について

この前のコンサートでラヴェルのマ・メール・ロワ全曲を聴いてから,この組曲を弾いてみたいなと思い,いろいろと調べていました(無料楽譜はIMSLPでダウンロードできます。)。

マ・メール・ロワは「眠れる森の美女のパヴァーヌ」「親指小僧」「パゴダの女王レドロネット」「美女と野獣の対話」「妖精の園」の5曲から成ります。

このうち,シャルル・ペローの童話集「過ぎし昔の物語並びに教訓」をモチーフにしているのは,1曲目「眠れる森の美女のパヴァーヌ」,2曲目「親指小僧」,5曲目「妖精の園」です。

今回は曲の背景を知りたいと思い,岩波文庫から出ているシャルル・ペローの童話集を読んでみました(ちなみに,3曲目の「パゴダの女王レドロネット」はマリー・カトリーヌの「緑の蛇」を,4曲目の「美女と野獣の対話」はボーモンの「子供の雑誌,道徳的な物語」を,それぞれモチーフにしているそうです。)。

 

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まずこの童話集ですが,子どもの頃に多くの方が親しんだ作品ばかりが収められていました。赤ずきんちゃん,眠れる森の美女,ねこ先生または長靴をはいた猫,サンドリヨンまたは小さなガラスの靴(シンデレラ),青ひげ,親指小僧などです。

タイトルとご覧いただくと分かるとおり,現代も童話として親しまれているだけではなく,アニメや映画になっている作品も多くみられます(ちなみに青ひげは,バルトークが「青ひげ公の城」というオペラを作っています。)。ただし,巷で知られている内容とはかなり異なっている部分も多くあります(たぶん,時代が下るにつれて,子どもに悪影響を及ぼすと思われる残酷な部分などは修正を加えられていったのだと思います。)

 

ちなみに,シャルル・ペローはパリのブルジョワ階級出身で,44歳の時に19歳のマリ・ギションと結婚し,6年間に3男1女をもうけた方で,フランスアカデミー会員や王属諸館監査役などをしていた方です。

今回取り上げた上記の本は,現在はペロー寓話集として出版されていますが,元々は1695年に「ガチョウおばさんの話」(マ・メール・ロワ)という,5話が含まれた手書き本でルイ14世の姪に捧げられたものです。その後1697年に8話に増えて「過ぎし昔の物語並びに教訓」として出版されました。

 

 今回は,眠れる森の美女と親指小僧を取り上げたいと思います。あらすじは次のとおりです。

眠れる森の美女

幼い王女の洗礼式には,国の仙女7人が呼ばれるはずだったが,手違いで呼ばれなかった1人の仙女がいた。この呼ばれなかった仙女が,洗礼式に呼ばれなかったことを恨んで,王女の手に糸巻きが刺さってそれがもとで死ぬという呪いをかけた。しかし,他の仙女がその呪いを,100年の眠りにつく呪いに軽減した(その後,王女は糸巻きが手に刺さって100年の眠りについた。)。100年後,若い王子が現れてその眠りを覚まし,王女と結婚した。

結婚した王女は王子とともに宮殿で生活するようになったが,王子の母親(王妃)は人食い種族で,王子が出陣して留守の間に,王女とその子どもらを食べようとした。コックが機転を利かせて,王女とその子どもらを匿っていたが,結局ばれてしまい,危うくなったところに王子が戻る。真相を知られた王妃は事の成り行きに逆上し,自死してしまう。

 

親指小僧

 子だくさんで貧乏な夫婦の7人の男の子が,口減らしのために森の中に捨てられた。森をさまよっているうちにたどり着いたのが,人食い鬼の家。この家の優しいおかみさんに匿ってもらうが,おかみさんの夫である人食い鬼に見つかってしまう。おかみさんの説得で,その場では子どもたちの「下処理」を思いとどまった人食い鬼だが,やはり下処理をしなかったことを後悔して,夜中の暗闇の中,下処理をする(7人兄弟の末っ子である親指小僧が機転を利かせて,人食い鬼の7人の鬼娘の王冠と,7人の男の子の帽子を事前に入れ替えていたため,人食い鬼は気づかずに自分の7人の鬼娘の喉を掻っ切って「下処理」してしまう。)。

朝,それに気づいたおかみさんは卒倒して倒れ,それを見た人食い鬼が夜中に逃げ出していた7人兄弟を,7里靴を履いて追いかける。人食い鬼が追い疲れて一眠りしている間に,親指小僧は7里靴を奪い,人食い鬼の家に戻り,おかみさんに「人食い鬼が泥棒一味につかまって金銀財宝を要求されている。親指小僧に気づいて,7里靴を貸してくれて,おかみさんに言って金銀財宝を出してもらうようにと頼んだ。」と伝え,出してもらった金銀財宝を持って元の貧乏な夫婦の家に戻った。そののち,親指小僧は,7里靴を使い,軍隊の消息を王様に報告したり,貴婦人方に恋人の便りを知らせるなどの伝令の役割を果たし大儲けして,そのお金で父親や兄弟に公職を買ってやったりして安楽な暮らしをさせてやった。

 

原作は上記のとおり,非常に血なまぐさい感じで,全く子供向けではありません。ラヴェルもそのような部分は曲のモチーフにしていないのではないかと思います。

 

眠れる森の美女がモチーフとなっているのは,1曲目と5曲目です。

1曲目は時間が止まったような印象を受ける曲ですから,茨や灌木に覆われた城の中で,仙女のかけた魔法で,王女をはじめ貴族,貴婦人,女官や王女のペット,料理(雉やウズラの焼串),火ですら眠りについる様子を描いているように思います(ちなみに王女一人だけで眠りにつかなかったのは,王女が目覚めた時に,周囲がすぐに王女のために役立てるようにするためです。)。

5曲目は眠っていた王女が,目覚める場面を描いたもののように思います。原作では,茨や灌木の生い茂る城に王子が近づくと,これらが退いて王子だけが通過できました(お付きの者は城に入れなかった。)。王子が寝室に進んでいくと,15,16歳ほどの神々しいまでに光り輝く王女が天蓋のついたベッドに寝ており,それを見た王子は,その美しさに震えながらうっとりしたままベッドに近づき,その近くにひざまずきました。すると王女が目を覚ましたという場面だと思います。

王女を妖精に例えて,「妖精の園」というタイトルになったのでしょうか。

 

親指小僧がモチーフとなっているのは2曲目です。

貧乏な両親は7人兄弟を2度森に捨てに行きます。1度目は親指小僧が白い小石をあらかじめ拾っていたために,行く道すがらこの小石を落としていくことで,家まで迷わずに戻ってこれたのですが,2度目はパンくずを目印にしたために,小鳥たちに食べられてしまい,来た道がわからなくなってしまう・・・。森に迷い,不安な気持ちを表しているように思います。

 

3曲とも,文学作品の一部しか採用していないように思いますが,こういう風に物語から曲のイメージが広がるのも面白いなと思います。

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